BL短歌(〜500)

0451.屑石をたましいぶくろに詰め込めば傷つかないと信じてた日々

0452.あんなにも溶けあっていたぼくなのに君の言葉がもう響かない

0453.世界でも君でも(世界は君だけど)あいしているんだ性欲でなく

0454.壇上で兄はうっとり目を閉じて裂かれることを待つしろい喉

0455.長袖の下は青あざまだ人の言葉も知らず 愛を教えて

0456.弟はわらう 見えない友だちが彼を支えて歩ませるから

0457.春は来ぬ こたつ布団にくるまって猫のことばでがあがあと鳴く

0458.壊れゆくものその細い輪郭がふるえる夜にふたり黙った

0459.泣いても良い、泣いても良いんだ、たのむから悲しむことを我慢しないで

0460.それでもなお何を知覚することもなく零れ落ちつ涙はきれい

0461.これからは何人分の荷を負うの骨のかたちをなぞれる背中

0462.鈴を振るやうに蒼薔薇割れたので眼は嘘をまことと語る

0463.金鵄章パジャマの胸に縫い付けた祖父の眠りの隣でゲーム

0464.英雄に憧れるころ少年は祖父の右手の銃創を知らぬ

0465.半世紀前には街は燃えたのだ魔物を殺す勇者よ勇者

0466.じいちゃんと同じ名前の友達がもう殺すのは嫌だって言う

0467.夕暮れの向日葵畑で遊ぶときぼくらを覆う飛行機の影

0468.お盆には海へ行ってはいけないと叱った祖父と同じ名の友

0469.芯までも凍えるような夜だからただめちゃくちゃに手酷く抱けよ

0470.悔しくて苦しくてへらへら笑う僕は可愛い女の子じゃない

0471.クズだなと褒めて保てるプライドでサークラ女に憧れてみる

0472.「骨ばって声がどんどん低くなる前に死ぬのと云ったね、君は」

0473.何故男らしく生きねばならぬのと泣いたお前と星を見に行く

0474.幻想の男らしさをぶちやぶれ!スイーツ!ロリポップ!ハイヒールで1・2・3!

0475.愛しいと言うなら茨をかきわけて 憐れむだけなら誰でもできる

0476.僕は歌う 君に届かずとも歌う 歌い続けることで勝つのだ

0477.愛しあうために不要なものすべて取り払ったら脈打つ心

0478.こちら素体No.284。No.220、あいしてる。

0479.アルバムに一文字違いの姉がいて死んだ少女の時間を生きる

0480.ただしさのために生きるということは孤独なのだと年老いた王

0481.偽りを憎めば我が身に堪えがたき背理 誇りは貨幣にならぬ

0482.窓際で眠るお前のほっぺたに青年期いまひらりと桜

0483.性別を機械に与える業ゆえにぼくらのアダムは無性具有者

0484.遠すぎるものを救いと呼ぶのだよぶつかり合えばいとしいけれど

0485.くびすぢに恍惚はしる夜ぞ深くくれなゐの薔薇またたいてゐる

0486.きみは僕わたしはあなただったのだ羊歯、羊歯だらけの海辺の記憶

0487.プラトンも知らぬ十三歳のころ君と出会って世界は満ちる

0488.少年よ眠れ金木犀の下いつかお前の百年王国

0489.冷たくはないけど柔らかくもない僅かに欠けた樹脂の指先

0490.色褪せた床の挿花に口を寄せいまや我のみ知るその時分

0491.空を踏むその爪先にあ、つばさ 聖なる国へ君なら行ける

0492.これ以上素晴らしいものなんてない瞬間、塗り替えられてく青春

0493.書を写すその指先を見るたびに生きてて良かったと思うのだ

0494.慈善ならもう愛なんて囁くな救われたいのはあんただろうに

0495.わけもなく殺したいって思うよにみんなとハグをしたい春です

0496.初恋はきれいなひとと落ちるものだと思ってた いちごを潰す

0497.ゆふぐれに鞦韆揺らす耳元へ改悛なさいと命じる僕は

0498.首絞めて頸動脈を裂かれても十五年後に会いに行くから

0499.対岸で手を振るきみに男雛舟海ならふたり行き着けるだろう

0500.敗者ではいられないので外来種銃にこめたら花咲かすのだ