BL短歌(〜450)

0401.道徳と宗教が得意 あの夏の少年にはもう戻れないまま

0402.先輩 信じてもいないなら十字架を外してください

0403.白鳥が鐘楼をつく リボンタイほどいて風にまかせて死地へ

0404.この寮の幽霊として永遠に君を恋いたし まひるのひかり

0405.さよならを言うにも制服なんですね葬列に似た礼拝堂です

0406.北へ飛ぶ白鳥の群れ 性のない愛を正義と呼べはしないの

0407.おんなのこだったら君の優しさに気づかないまま嫌えただろう

0408.北の果てからトランクにいっぱいの花を摘むため世話になります

0409.ふたたびの生を得るなら見失うことはないねとマクドナルドで

0410.つま先でさぐればさぐるほど底は深まる 声もいらない場所へ

0411.ちょっとだけ予定を早めただけだった副葬品は互いに決めた

0412.ぼくならば積み木の城を裏切らぬ家臣になれる証拠をあげる

0413.「月曜に少年ジャンプを買ってきてくれる奴って重要だよな」

0414.心から欲したものはひとつだけ命にまさるくちづけを、いま

0415.返り血の及ばぬ場所を守ってるただそれだけの温もりを知る

0416.悪い子だそんなに心を閉ざすから魔法で爪が黒くなるのだ

0417.十年間お前はウィスキー樽の中眠ってたのだ琥珀の天使

0418.ありふれたジュテームじゃなくもっともっと、お前が欲しいのどう言えばいい?

0419.かみさまじゃなくてもここで朽ちていく未来のための覚悟はしてる

0420.梅雨ごもり汗ばむ肌と棒アイス 女のようにはなけなかった日

0421.「薔薇は薔薇、百合は百合、紐付けされたことばの奥の意味を答えよ」

0422.食べるなら手ずから絞めて血を抜いて一晩煮込んで骨まで愛して!

0423.もう君は傷つかなくていい夏の盛りに水をかけてあげるね

0424.敗北は目に見えている開戦を告げてグラスに光が揺れる

0425.故郷を焼いた男の飛行機に乗ればなにより美しい青

0426.いっぽんの氷柱が尾根を突きやぶり恋心とは狂気そのもの

0427.先の世でなくしたものを埋め合わすように抱き合うプラネタリウム

0428.みな人はロトの妻なりほろぶとも刹那あなたを焼き付けていたい

0429.板チョコをきれいに割れた試しなく破片で君の舌をくすぐる

0430.秀才としてたくさんの努力家を蹴落とした君お元気ですか?

0431.阿部定とおんなじ気持ちで僕はいま君の右手をくわえています

0432.パッヘルベルのカノンだお前といることはピカデリーでも第九でもなく

0433.鼻歌がメジャーコードを奏でない春の長夜のぬかるみのこと

0434.感情はことばではなく色だった音楽だったぼくらの国で

0435.ひとりきりぼくは荒野をさすらっていつか果実を分け合うだろう

0436.呪わない救いもしない神にただ祈ることだけ僕はやめない

0437.心など手に入らない期待しない島のゾンビは忠実らしい

0438.中庭の棕櫚の根元にネクタイを埋めたら記憶は薄れぬと聞く

0439.息白む三月一日制服のあなたは死んでしまう(失恋、)

0440.すれちがうばかりの俺たちだったけど後期は同じ学部なのだな

0441.愛されない理由を知りたかったころ男と寝るのは怖くなかった

0442.歯車が人間になる町工場帰りの汽車の窓には林檎

0443.我が夢に夜毎美童の通いきぬ百年の後まみえませうぞ

0444.もうなにもないカーテンもない部屋のひなた それでも好きでいたいよ

0445.ビルの谷間に潮騒を聞いていた酒の仕込みのリズムと知らずに

0446.カーテンを透かし夜明けの光さし傷跡だけが鮮明になる

0447.もろびとを救う男が我に告ぐ「生まれなかった方がよかった」

0448.けふ豚の屠殺を見ました蝿曰わく性の目覚めは常に夏です

0449.ソプラノに青を聞き取る少年は恋のいろはもソルフェージュせよ

0450.讃美する主はもはや無く寝台でふと口ずさむキリエエレイソン