BL短歌(〜250)

0201.友よりも強き男であるためにかかげた拳がお前をえぐる

0202.垣根の上を歩みたがる君といて紅葉小春日和を燃やせ

0203.この身体で煽れる炎は妬心だけ焼き尽くすなら骨も遺すな

0204.押し入れの柱に指を這わせれば旱の夏の義兄がほほえむ

0205.あなたたちが眉をひそめる残酷を残らずぼくらに開け放ちなさい

0206.国ひとつ滅ぼしてまた春が来る

0207.死ねよじゃなく殺すって思った十四の僕をお前は知らないだろう

0208.俺のこと何にも知らないくせして知った口利くのやめろバカヤロー!

0209.ライターでこの肌炙り火傷の痕に首を傾げる無邪気なひとよ

0210.彼を愛せば破滅と知って葉桜はこれより二度とみにくく咲かぬ

0211.ただ一度愛するひとに愛しいと言われてみたい ただそれだけだ

0212.「拝啓 君に会えないことが身に沁みてつらくいまさら愕然とする……

0213.ふるさとを箱庭と悟る十六の朝に見上げた雲の果たてよ

0214.導いてゆかねばならぬ定めでも愛とは惚れたものが負けだよ

0215.十代の激情しづかにすりつぶし薬となせば死はまだ遠し

0216.遠ざかりゆく漂泊の日々ひとつ 君はまばゆさそのものだった

0217.生きるしかもはやできない途上にてまどろめば青年の翳りうつくし

0218.かさついた唇の皮が引っかかる惨めな夜の蜜を舐めおる

0219.無二の日も過ぎていくならそれをこそ慈しむぼくしがみつく君

0220.熱帯の魚まなこをこごらせてなお泳ぎゐる地獄、爛漫

0221.当てはまる単語はないが要するにS極N極なのだぼくらは

0222.憎しみでなく憐れみで君の死を願ったらもう去り時だった

0223.ラブプラス炬燵囲んでつっついてあいしてるから報われないでいい

0224.好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだそんでどうしようもないことを知ってる

0225.恋人ができたら紹介してほしい 女だったら祝福するから

0226.叶わない恋なのだろう(叶わない恋をしている自分が好きだ)

0227.もし明日世界のすべてを呪っても書斎のすみで交わす永遠

0228.文法をたずねれば冬 水紋の硝子 南天 指先の熱

0229.弓なりになるとたわむとしなるとの語意の違いを教えてやるさ

0230.赦さぬとささやきながら情欲の炎を点す性と青春

0231.憎しみを鎮められないなら鬼子 九相の果てをも惜しまず戀うる

0232.君のその激しい憎しみごとすべて抱きしめ生きていきたいんだよ

0233.きみ男の子 不具の子 鬼子 無罪の子 激情の華咲かせば火の粉

0234.たったひとつの染色体が住む場所を分かつならぼくらぼくとはきみだ

0235.ゆるせないことはゆるさなくてもいい割れた塑像にラッカーを塗る

0236.うすき腹に額をあててヨセフよりガブリエルのよに告白をする

0237.溺れゆく間際にきみは白百合の光を背負いぼくにほほえむ

0238.踏み越せぬカーテンのその隙間からいつか愛した人に会いたい

0239.銃創をよもぎの匂いで飾りつけ僕らは神様の子供だよ

0240.襟元を引き寄せ殴り殴られて足を取られて重なる浅瀬

0241.かくれんぼ杉立ち並ぶ境内で千年過ぎてもまだ日は暮れぬ

0242.クソッタレみたいな嘘や建て前は知りたくもない優しさでした

0243.教室を抜けて飛びこむ図書室の海で少年虹色になる

0244.弱くても生きられる世であったなら君は泣かなくたって良かった

0245.害せない弱さをちからと言い換えた赦しの秘蹟に犬を放てり

0246.何もかも覆い隠せし雪の日に聖なるかなと声を揃える

0247.美しくあるべきものゆえ美しく愛するに足るきみのプライド

0248.終末は救いと笑みを掘りさげる二人も遠く光の中へ

0249.若さとは未来を信じられることで共に生きれる夢を見ていた

0250.雪原が薔薇色に染むこの冬が終わるころにはきっと僕らは、