文学フリマに出店します

ぎりぎりになってしまって申し訳ありません。本日開催される文学フリマで、BL短歌自薦歌集を販売します。
以下のように連作として再編して、小説を書き下ろした一冊です。新書版/本文58p/200円。スペースはC-51でお待ちしております。

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 カウンターボーイ
何故男らしく生きねばならぬのとわらった君の潮騒を聞く
泣くこともゆるされぬ性背負いつつ弱音を吐ける恋はいいよな

  聖家族
その胸に仄かに揺れているものを火と知っていて摘まんでしまう
押し倒されて屈辱に喘ぎなさいあなたのやり方で愛すから

  神様の子供たち
みせかけのものはいらない子供たち 信じさせてよ見るものすべて
半身よ 君よ 囁きあうことは偏光板のひかりの洪水

  サヴァイヴァーズ/チルドレン
支えあうようなふたりになれなくて共倒れする恍惚を待つ
遠ざかりゆく漂泊の日々ひとつ 君はまばゆさそのものだった

  見鬼小景
雨を待つ鎮守の森は静かなり鬼百合を摘む子はまだ七つ
けふ豚の屠殺みました蝿曰く性の目覚めは常に夏です

  八月は海
じいちゃんと同じ名前の友達はもう殺すのが嫌だって言う
揚げひばり桜の国の君なれば老いゆくことの幸いであれ

  夢のあとに
定理など聞かなくていい少年は書架から書架を移ろう虹だ
薄日さす陵なだらか夢のあとに君の名残りを抱いてねむる

  あとがきにかえて
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや

どれを引こうか悩んだけれど、いちばん好きなこの歌について書きたい。この歌は友人と家出ごっこをした夜に結び付いている。十四歳になったばかりの秋、持てる分だけの金を持って列車に飛び乗った瞬間はひどくどきどきした。どこか遠くへ行きたかった。彼とならばどこまでも行けると信じていた。大人に従順であることには飽いて、非行集団に加わる向こう見ずさには疎かった。あらゆるルールを意に介さないような友人の態度に憧れた。彼の隣にいること、彼の愛する本を読むこと、それだけでどこか非日常の気配がした。僕は彼が好きだった。